シュトレン

今のように認知度が上がるずっと前、私がドイツの焼き菓子シュトレンを知ったのは、かれこれ30年前のことだ。ドイツ人と結婚したと風の噂に聞いていた大学の後輩から妙に事務的な茶封筒が届いた。ドイツからの航空便。入っていたのは、今なら知ってるシュトレンが1本。手紙はない。学生時代からそっけないクールなヤツではあったが、私にしてみればフルーツケーキにしては硬いし、何でこんなものを?と頭の中で?が乱舞。たしか数日後に電話があって「あれ、先に届いちゃいましたか」と言い訳しつつも食べ方を教えてくれた。

なぜか、美味しかったという記憶はない。

そう、日本の洋菓子は美味しい。本場の職人さんには申し訳ないけれど、平均点は明らかに勝っていると思う。私たちが2回の冬を過ごしたマルセイユではイタリア風のフワッとしたやわらかいフルーツケーキがスーパーの目立つところに山のように積まれていた。あげたり貰ったり自分で買ったりしたけれど、味を追求するものでもなかったように思う。

そんなことを思い出したのは、仕事でドイツに行っている姪っ子の一時帰国のお土産がシュトレンだったから。いかにもスーパーに積んであるタイプだな。クリスマス当日まで薄く切って少しずつ食べるのは知っていたけれど、まん中から食べはじめて切り口をくっつけておくものなのだと言っていた。私もドイツ風でやってみよう。

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