図書館の人

言葉をかわした何人かの顔を思い出せる。私の唐突な質問に頭フル回転(たぶん)で考えてくれる、あの間がすごく好きだ。図書館司書という仕事人。

滋賀にいた頃はまだインターネットが普及してなくて、デザインの仕事で何度か同じ人にお世話になった。「貝殻のデザインを探してて、写真じゃなくて白黒の精密画がよくて…」なんてお題に「こちらへ」と導いてくれる。ショートカットの背の高いお姉さんだった。自動ドアを開けたとたんに目が合って「今日は何をお探しですか」と不敵な笑みを浮かべて聞いてくれるまでになった。

茨城に来たときは村に図書館がなくて、50キロ離れた県立図書館まで通っていた。人として興味のあった大江健三郎の最新作がピンとこなかったことをリファレンスカウンターのお兄さんに訴えてみた。やはり一瞬考えてから、閉架書庫に初期の作品から揃っていて、若い頃の作品の方が読みやすいと教えてくれた。時代を追って読んでいくのはどうでしょうか、と。

今ではたいていのことがネットで自分で調べられる。でも、思い出したらあの表情に会いたくなった。2週間に一度10冊の小説と何冊かの料理本を借りに行く常陸太田市立図書館、何か思いついたら話しかけてみよう。

Naomi Shioya's WORKS

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