家電の色

私が実家を出て一人暮らしをはじめた時、父が小さなテレビを買ってきてくれた。なんと画面以外が赤! 思わず「なんで赤なの!」と叫んだ。

少々ひるみながらも「やっぱり女の子の部屋に置くなら赤がいいだろ」と。反抗期を脱したばかりの娘に気をつかっていたんだな。

でもね、私の部屋に赤いテレビはさあ・・・そこで大学の「デザインポリシーゼミ」で教わった理屈やら何やら、これからはシンプルイズベスト、家電の色はモノトーンかシルバーがあたりまえになるとまくしたてた。かわいそうに黙って娘の講義を聞く父。

数日後、今度はピンク色のジューサーミキサーを持ってきた。呆れる 私に「家で使ってたミキサーをカッコイイ新型に買い替えたから古いのをおまえにやる」と。どうやら私の意見を受け入れた結果らしい。

贅沢を言えない身の上、お古ではピンク色でもしかたがない。

しかしこれが何年使っても壊れない。切れそうなコードを直したり、割れたフタを手でおさえたりしながらもちゃんと使えている。

そして使いながら父と娘の小さなバトルを思い出して笑ってしまう。


Naomi Shioya's WORKS

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