梅の花

水戸市民になって初めての梅の花の季節。水戸には偕楽園という梅の名所がある。徳川最後の将軍・慶喜のお父さん、斉昭公が戦に行くときに梅干しが必要だからと桜ではなく梅園にしたんだとか。でもなぜか水戸の梅干しが美味しいという噂を聞かない。あくまで非常食なのかな。

5歳から18歳まで暮らした東京の家には素敵な枝ぶりの梅の木があった。池上本門寺の植木市で祖母が買った木。植木市というのは境内いっぱいに様々な植木が運び込まれて、それはそれは賑やかだった。祖母はいつもうちで頼んでいる植木屋さんの店に直行。植木屋のおじさんもうちの庭をよくわかっていて「池の南側にこの梅がいいですよ」とかなんとか売り込んでいたような気がする。私は子供心におじさん商売上手だなあと思った。江戸っ子の祖母はそういう時に気前よくポンと買ってしまう。そういうところがカッコイイ人だった。

花が終わるとまた植木屋のおじさんが来て枝を思いっきり切ってしまうのが納得いかなかったけど、梅っていうのはそういうものらしい。

偕楽園の梅も庭の梅もいいけれど、私が一番好きなのは里山の梅。まだ寒々とした田舎の風景の中に、あそこに白こっちにピンク、と点在する。春が来るなあと思わせてくれる梅の花はにおいもいい。

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